一匹狼と狼少女
「離れがたい。」
龍也は静かに呟いた。
あまりにも素直な言葉に慌てる。
「…うん。」
アタシは龍也の首に顔をうずめた。
《朝ご飯の時間です…》
大きい放送の声に、体が揺れた。
「行くか。」
面倒だな、と龍也が体を伸ばす。
アタシは池の中を見た。
「鯉は食えないからな。」
「わかってる。龍也じゃないし。」
すこし馬鹿にされた気がして、イヤミを返した。
二人で部屋に戻る選択をした。
不意に、女将さんが壺を大事そうに抱えているのが見えた。