空の果て星の息吹

出逢い

昨日とは違い、今日は朝から雨が降っていた。
雨音で目が覚めるくらい大粒の雨だった。


スクーターの修理は2、3日かかるらしく、暫くはバス通学になるので、いつもより早く部屋を出なければいけなかった。


支度をしながら、テレビを点けると、ニュースで台風が関東に向かっているとの事を話していた。
大きな白い渦巻きの影が大きく関東を中心に、巨大な蛇がとぐろを巻くように見えた。


今頃は、関東の伯父の家の辺りが台風の中心なのだろうか?
心配しながら、簡単にスクランブルエッグとトーストを食べ、部屋を出た。


雨は、部屋で初めに見たときよりも小降りになっていたので、傘をさしながら小走りでバス停に向かった。

雨の日のバスはなんか濡れた子犬の匂いがして好きにはなれなかった。


クラスメートと何人か会い軽く挨拶をかわしながらバスに乗る。


この時間のバスはかなり人が入るので、無論座れはしない。


吊り革を握りながら、昨日の物理を復習しようとモバイルパソコンを開いた。


昨日の授業内容を読みながら、定数を頭に浮かべ考えていた時。


バスが突然揺れて、態勢をくずしそうになり、吊り革を握る手に力が入る――


目の前の大きなバックを担いだ少女もバランスを崩し床に転んだ。


カバンが開いていたのか、中の物が少し散乱していた

僕はパソコンをしまうと、倒れた彼女をおこしあげた

彼女の身体はすごく軽かった、、彼女は今どき珍しい綺麗な黒髪で派手目な感じではなくどちらかといったら控えめな整った顔をしていた。


彼女は愛用のメガネを探して欲しいと頼んできた。


細い黒フレームのメガネが足元に転がっていたので、拾い上げ渡した。


『大丈夫??』


彼女は眼鏡を掛けながら答えた。


『ぁっ・・はぃ』

 
床に広がった学園支給のモバイルパソコンやら、お菓子やら、化粧道具やらをひろった中に、古い紙製の本があった。


図書室にはあるが、今は紙製の本自体はあまりなく、活字媒体は爪くらいの大きさのマイクロナノディスクと呼ばれるデジタルタイプが主流で授業の教本もパソコンにディスクを入れて見る。

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