空の果て星の息吹

見えない距離

シャトルは三日後の午前10時に成層圏の彼方のエデンに上がる。


ユイと暫らく会えなくなるので、出来るだけ居たかった。


ユイと会うとどことなく心の奥で罪悪感に苛まれる。

夢を一緒に叶える約束は先伸ばしになったからだ。


ユイは悔しい気持ちを抱えてるはずなのだが、それを抑えている。


会うときは笑顔でいてくれるから余計に辛い。


笑顔は不思議だ。


同じ笑顔なのに、この笑顔に救われる事もあったし。

笑顔に傷つけられる事もあったし。


気持ちの度合いがあり、寂しく感じたり楽しく感じたり。


笑顔は形だけでは判らないのかもしれない。


気持ちを封入して初めて完璧な笑顔になるのだろう。

ユイと車で海岸線をドライブする、温暖化の影響か、クラゲの大量発生や赤潮の影響もあり、佐渡は夏観光で賑わうのだが、今年はそんなでもないようだった。

シンの家は季節旅館だが、今年は、お客が少ないと話していた。


長年の風雪で朱色のペイントが所々、剥げた灯台の真下に車を止めた。


『宇宙は、僕らが生まれてから変わっていない・・例え、今回、エデンに行けなくても、長いスパンの中では一瞬だから・・』


『うん・・・』


『辛いのは、悲しいのは中途半端な自分がいるから、喜んであげたいけど、悔しがっている・・そんな自分がいるから・・』


『何でも、気持ちを整理して話さなくてもいいんだよ・・・ユイは真面目だから・・・悔しかったら、悔しいっていったらいい、何でも自分で答えを出さなくても・・・』


ユイは俯いてそして、悔し泣きをした。


初めて見た感情だった。


空が気高い程に蒼く感じる

僕らはどうなるのだろう?
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