空の果て星の息吹

重力の向う側

雲と雲の合間を突き抜けて空の彼方へと進む。


重力は地球という母が子供で無知な人類を抑えつける鎖に思える時があった。


人類は自らの作った科学という知識で、進化を遂げて初めてその鎖を断ち切って進化を続ける。


空の青色が濃くなり、まるでインクを溶かした様な黒に似た色に変わる。


成層圏に入る、機体が擦れるような音を出して小刻みに揺れる。


最後のブースターを切り離す。


機体が大きく揺れる。
激しい揺れが続き、やがて揺れが納まる。


緊張して無意識に強く握っていたシートの端を放した

前面に広がりのは漆黒の宇宙だった。


僕らは地球から出て、宇宙という大海に出たのだった

艦内が喚起の声で満たされた。


『こちら朱鷺、打ち上げ成功し我々は成層圏を打ち破り、ただいま大海に出た』

高田機長が洒落て話すと官制室も答えた。


『今日は良い船出らしい、海は静かかい?』


シートベルトで固定されてはいるが、足や手が浮く。

塩分濃度の高い海に浮いている感じがする。


重力からの解放に戸惑いながら、僕らはお互いを見て宇宙に来たのを実感した。

シャトルはバーニアを動かし、角度を微調整しながら、地球上をゆっくり回る。

宇宙から見た地球は青い海が広がり、白い雲が上品に、そして、大きく気高く見えた。


地球の美しさはとても言葉では上手く表現できない、最上級の誉め言葉もチープに感じるくらいの素晴らしさだった。


この眼下に広がる景色をユイやシン達や伯母に見せたかった。


そして、天国に居る両親や伯父にも・・・


地球と暫くランデブーしてからシャトルはエデンに向けて進んだ。


< 167 / 216 >

この作品をシェア

pagetop