空の果て星の息吹

夕暮れ

放課後になり、シンは早々にサーフィンに向かった。

シンには何回も誘われたけど結局今だに出来ない。


やりたくない訳では無いが日射しに弱い体質で中々見学にも行けないのだった。

夕暮れの赤みを帯びたゆるやかな光が綺麗で図書室から外に出る狭いのベランダから空を見ていた。


同じ図書委員の八神涼子(やがみりょうこ)がいつの間にか、隣に立って話し掛けてきた。


『遠野くんはここに居るときは夕日をいつも見てるね』 


落ち着いた雰囲気の涼子は手摺りに肘をつけながらやわらかい口調で話した。


『夕日を見るとなんだか、落ち着くから、東京の実家で見る夕日はこんなに綺麗じゃなかったから、、特にね』


涼子も同じ関東出なので、共感した様で、大きくうなずいた。


閉校のチャイムが鳴るまで世間話をしながらその場所にいた。


空の彼方に再開発計画の為の国際ステーションのエデンが浮かぶ。


『八神さんは学部決めたの?』


涼子は長い髪を掻き上げながら空を見上げ答えた。


『情報学部かな?私は火星開発本部よりも、あの天空に浮かぶエデンで星に囲まれながら、地球と火星の通信オペレーターになりたいんだ』


涼子は英語科目が特に得意だった、よく判らない部分を教えてもらうくらい。


彼女の語学力は優秀で、素晴らしいオペレーターになれると実感できる。


『遠野くんは?』


『材質工学を学びたいんだけど・・あの学部は倍率高いから・・入るのが難しいかもしれない・・』


涼子はそれを聞くと大きく頷く。


『確かに倍率高いよね、材質工学部は・・・』


『一次志望は材質工学部だけど・・・二次がね・・決めかねているんだ』


『遠野くんなら、運動神経も良さそうだし、プログラムも成績良いから、新設の宇宙装機(スペースワーカー)学部なんてどうかな?』


宇宙装機(SW)は宇宙での無重力状態で作業するSF的に言うと、作業用パワードスーツに当たる。


人が乗り操作する人型のロボットの様なもので、宇宙空間作業者の育成の学部である。


新設の学部であり、充分魅力はあり、興味を惹かれる学部でもあった。

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