ユピテルの神話


彼らの世界は、
明るく鮮明になりました。


この世界に、この森に…
「共に生きる者」として、
植物たちを慈しみ、お互いを尊重し大切にして貰いたかったのです。

なぜ、僕がそう願ったのかは分かりませんでした。
「無き記憶」がそうさせたとしか、言いようがありません。


しかし彼らは…

自分たちの暮らしの為に、次々と木々を切り倒しました。


広くなった視野、自由に見渡せる世界に気を良くした彼らは、徐々に自分たちの村を大きくしました。

畑を作り、実を収穫し。
少し豊かになった村が人口を増やせば、村から選抜された人々がさらに木を切り倒し、新しく村を一つ作りました。


その繰り返しで周囲にいくつかの村が出来た頃…

緑色の光を降らせてくれる僕の力の込められた木々は、周囲から消えました。
一本残らず、命を取られてしまったのです。

「世界の中心」などと、傲慢な事がよく言えたものです。

こうして…、

「森の中心」には、
穴が空いてしまいました。


悲しい事に、

再び…
暗闇の世界となったのです。


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