ユピテルの神話
街の真ん中に敷かれた、
僕の足元へ続く道。
「…ぁ…、貴方はこの街の住民ですか?僕を…知っているのですか?」
男はその道の上で、僕と一定の距離を取って足を止めました。
そこからでは、光の具合で顔がはっきりとは見えませんでした。
『…会った事は無い。だが知っている。…一応、確認だ。お前さんの名は?』
「……ユピテル・ラディス…」
ロマを抱く腕に力が入ります。
この後に彼からどんな言葉が出てくるのか…。
僕の呼吸は早くなりました。
『…やっぱり、お前がユピテルか。本当に、何もかも忘れたんだな…』
この世界で、僕をユピテルと呼ぶ人は居ませんでした。
皆、ユラと呼びます。
「…この街は、違う世界から来たのですね?僕は、この街に居たのですね…?」
『お前さんが知る必要は無い。俺は、お前さんから「ある物」を譲り受けに来ただけだ。』
「ある物…?何ですか?」
『――時計だよ。』
彼がそう言うと、僕の胸が金色に光出したのです。
「――ぇ!?」
僕の胸の中から…
金色の丸い物体が、通り抜ける様に飛び出して来たのです。
その金色の物体は、男に操られている様に彼の手に収まりました。