ユピテルの神話


僕は何故…
妖精の姿をしていたのか。


もう、僕は知っていました。

それは大昔、
あの時計を背負う前の事…。

この世界で暮らしていた大勢の妖精たちの中の、一人だったからです。


それは僕にとっての「大昔」。

この時の世界にとっては…、
少しだけ「遠い未来」の事。


未来で暮らす僕は、ある教会の牧師に拾われて育てられました。

僕の名前は、ユピテル。

神の様に偉大な息子に育てと、その牧師が神の名を付けたのです。

人々に伝えられる神話の内容も、もう僕は知っていました。
僕の記憶に染み付いています。


誰が想像したでしょう。

時を経て、
時を戻り…。

記憶を無くした僕自身が、
この世界を導いた「神」と呼ばれる存在だったなどと…。


人々に語り継がれるのは、
まるで夢物語の様な「神話」。

その真実は、

この僕が全てなのです。


僕は「神話」の、
この先を知っていました。

「僕たち」の…

結末を、知っていたのです。


だから、
エマに謝りました。


貴女ヲ愛シテ、ゴメンナサイ。

僕ガ…
此所二来テ、ゴメンナサイ。


悲シマサセテ、ゴメンナサイ。



ズット…
一緒二居タカッタ。



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