ユピテルの神話
僕は、ロマに全てを話し終えていました。
彼は僕の腕の中で、時々首を捻りながらも真剣に耳を傾けていました。
「…ごめんなさい。ロマには、少し難しかったかもしれませんね…。」
それでも僕がロマに伝えたのは、彼と僕が一心同体の運命だからです。
ワン。
『…俺、ユラと一緒。ユラ消えたら、俺も同じ。分かった。』
ロマはつぶらな瞳で僕を見つめ、小さく尻尾を振りました。
僕は押し潰されそうな心を押さえ、ロマを力一杯抱き締めました。
貴方ヲ生ンデ、ゴメンナサイ。
残された時間で何をするべきか、もう僕は知っていました。
人々に伝わる「神話」通りに、世界を守らなければいけない。
『神は世界に向けるべき愛情を、愛する人へ向けてしまった。だから空へ浮かべて、忘れた。彼女への愛を…』
僕は記憶を無くしたまま、
すでに14個の月を作り終えていました。
15個目の月、
『彼女への愛』を作らなくてはいけなかったのです。
世界に伝わるのは表向きの僕。
世界を守る為…。
本当は違います。
僕は消えます。
その時に彼女が悲しまない術は無いのか、その方法を考えました。