ユピテルの神話
残された時間は少ない。
僕はすぐに森の主の元を訪れました。
金の懐中時計を失い、例え僕にその資格がないのだとしても…。
未来を壊してはいけません。
運命を…、
紡がなくてはいけません。
僕が僕である為に、
森の主に、「僕の最期」を伝えなくてはならなかったのです。
ザワザワ…
『…ユラ、大丈夫かい?先程の雨は、何かあったのかの?エマが心配しておったぞ?』
彼を見上げると、僕に降るのは優しい緑色の光の粒たち。
…アァ…
この世界で僕が生んだ貴方が、こんなにも…
…懐カシイ…。
それは遠い未来で、
より深く大きく根を張る長生きな貴方に…
僕が逢っていたから。
ザワ…
『…ユラ?』
僕は顔を上げ、
言葉に想いを乗せました。
「…おじいさん。ずっとずっと…この森を守って下さいね?ずっとこの地に生きる全てを見守っていて下さい。」
永遠を失った僕の「言葉」には、どのくらいの効力がありますか…?
まだ間に合いますか…?
僕が全てを終えるまで、
どうか…
まだ、待って下さい。
「…これから、僕はこの地を去ります。どうか、僕が愛するこの世界を…宜しくお願いします。」