ユピテルの神話
一瞬、森が音を無くしました。
風たちでさえ、動きを止めた様でした。
『…風たちの噂で聞いたんじゃよ…。あの七色の街が現れたと…。きっと、お前さんはそこで辛い何かを知ってしまったんじゃろうな?』
「――…えぇ。」
『…雨が降る程に哀しかった事とは何じゃ…?本当に…去らねばならんのかのぅ?』
「――えぇ。」
『…そうせざるを得ない理由が…あるのじゃろうな…?わしは、ずっと此所に。ユラが望むままに居る…。しかしな、エマは酷く悲しむじゃろうな…?』
「――……えぇ。」
ずっと考えていました。
僕の運命は変えられない。
僕の結末は変わらない。
ならば…
せめて、彼女が悲しまない方法はないものかと…。
その方法は、
一つしか思い浮かばなかったのです。
彼女の…
僕に関する記憶。
――僕ヘノ想イヲ、消シマス。
…貴女が幸せに向かう為に。