ユピテルの神話


「――じゃあ!どうしたらいいのですかっ!!?」


思わず出てしまった言葉は、
裂けんばかりの心の叫び。


はぁ…はぁ…と、
お互いの荒い息だけが耳に届きました。
それ以外、
聞こえませんでした。


僕は片手で自分の瞳を覆い、涙を必死に飲み込みました。


「……ふふ。僕が多くを語らなくても、エマはいつも…僕の気持ちをお見通しなんですよね…。」

まるで…

金時計を取り上げられる前、
僕が自分の記憶を消す前…
僕自身がそうであった頃の様に、エマには僕の心がお見通しなのです。


エマの顔は見れませんでした。

手で瞳を覆ったまま、涙を悟られないように…
口唇を噛みました。


僕の今の言葉で、張り詰めていた僕たちの空気が少しだけ和らいだのを感じました。


「……そうよ。私、分かってるの。私が貴方を忘れたら、貴方が苦しむくせに…。貴方は泣くくせに…。だから貴方の言葉は、真実にはならない…」


「……えぇ、そうですね…。」


きっと、その通り…

「真実」にしなければならないのに、彼女を愛する心が邪魔をするのです。


コノ心ガ、…邪魔…?


「…やはり…」


運命ハ変エラレナイ…


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