ユピテルの神話


僕は片手を、
自分の胸に当てました。

ここに在る想い。
温かな、彼女への愛情…


「――っ…!!」

僕は、忘れなければいけない。


コノ心ヲ、

世界二…
置イテ逝カナケレバイケナイ。


心を、取り出しました。



僕は瞳を覆ったまま…。
震える片手の上で光る塊は…

『彼女への愛』――…


「…ふ…、ぅ…うぅ…!」

声に漏れてしまう哀しみを、必死に堪えなければならない。
涙が雨に変わらぬ様、
耐えなければならない。

これは、きっと「罰」…。


「…ユ…ラ…?何を…何をしているの!?その光は、何っ!?…止め…て…」

彼女の背には、七色の羽根。
心の目は、見えない真実までも映すのです。


コレガ何カ、
ワカリマスカ――…?


「――止めてよっ!!」


「……この心は、僕から切り離し…空に、…夜空に浮かべ…ましょう…。」

「……ぁ…あぁ…!」

光は僕の手を離れ、
徐々に宙へ昇っていきました。


「…これで僕の言葉は『真実』になる。これで…貴女は苦しまずに済む…」

心が空へと僕から離れるにつれ、
僕の苦しみも、
徐々に減っていきました。


行カナイデ、僕ノ心…
唯一ノ、僕ノ光。


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