ユピテルの神話
瞳から手を離し、昇る光を見つめていました。
光が、涙で霞みます。
それはエマも同じ。
光を引き留めようと、何度も何度も手を伸ばしていました。
「――い、嫌よっ!!どうして!?いやぁあぁぁ!」
「…貴女への愛は空へ昇り、この世界を見守る…貴女を見守る…光となるでしょう…。」
エマは、まるで狂った様に首を振り続けました。
「…あの星から注ぐのは人々を照らす光。僕の…貴女への想いが漏れ出さぬ様に、…冷たく凍りついた星…」
あの星は、
きっと貴女を想う気持ちで優しく温かいから…。
その光を浴びた貴女が、僕の想いに気付いてはいけないから…
貴女への想いを閉じ込めた、
表面は固く固く、
凍てついた大きな氷の星…。
サヨナラ。
僕ノ大切ナ、想イ…
貴女二愛サレテ、
――僕ハ、幸セデシタ。
ざわざわと、
まるで台風の様に風たちが吹き荒れ、森がざわめいていました。
「…これで…僕は、貴女を愛してはいません。これで…僕の言葉は、真実になる…」
…真実二、ナル…
風に吹かれ、エマは泣き崩れた状態のまま、顔だけを僕に向け呆然としていました。