ユピテルの神話
「………」
「…………。」
長い沈黙の中、
新しく昇った月の、白い光が僕たちを照らしていました。
僕ハ、神ト呼バレル者。
人々ノ想イハ、
僕ノ言ノ葉二逆ラエヤシナイ。
「……エマ?」
僕は目を見開き固まるエマに、優しく声を掛けました。
「…ぇ?…あら、ユラ?私、どうしたのかしら…」
彼女の背に羽根はありません。
彼女はきょとんとして、僕の声に耳を傾けました。
「…あら?…私、泣いていたの…?どうしてだったかしら…」
…アァ…
コレデ、イイ……
「…あぁ…怖い夢でも見たのでしょう。少し眠っていましたから…」
「…そう?…そうね…」
僕は少し笑いました。
エマも少し微笑んで、涙を拭っていました。
まるで、
これまでの事が夢だった様に、穏やかな空気が戻っていたのです。
「…ねぇ、ユラ。私が眠る前、何を話していたっけ。何か大切な事の途中だったような…、…なんだか寂しいのよ?」
僕はその無垢な瞳から、目を逸らしたのです。
僕ヲ、見ナイデ。
「……さぁ…何でしたか?」
「…胸が苦しいの。私、叫んで夢から覚めたのかしら。喉も焼ける様に痛いのよ?」
「……夢ですよ…、きっと…」