ユピテルの神話
†運命ヲ紡グ言ノ葉

†運命を紡ぐ言の葉


僕には、
時間が迫っていました。

あんなにも…
時が進めば良いと願っていたのに、体に訪れる急速な時の早さに恐ろしさすら感じました。


「…おじいさん、この森で一番空に近い場所に行きたいのです。教えてください…!」

その場所で、
僕は最期を迎えるでしょう。


ざわ…
『…あぁ…あの山じゃ…』

風に吹かれた緑色の光の粒が、それは綺麗に夜空へ流れます。
目で追うと、そこには僕の望み通りの高い山。


アァ…
アソコガ良イ…


世界を一望出来そうで、
尚且つ、
夜空の僕の月たちに近い場所。

一番近くには、
『エマへの愛』――…


「…ユラ、何しに行くの?人があまり足を踏み入れない山よ?」

あどけなく、
彼女は残酷な質問をしました。


「……えぇ、僕の守る世界を眺めに…。それに、未開の山。貴女の瞳を治す薬草が…見つかるかもしれませんからね…?」


――嘘バカリ。


貴女に残すのは、
取り繕った嘘ばかりです。


「…私、この瞳が気に入っているって……。あら?いつか言った…わよね…?」

「……そうでしたか…?」


えぇ、
知っていました。

でも、僕は初めて聞いた振りをしました。


< 123 / 171 >

この作品をシェア

pagetop