ユピテルの神話


『ユラ消える。俺も消える。』

「えぇ…」

『消える時、別々は嫌。俺、ユラの分身。ユラから生まれた。ユラの中、帰る。ずっと…一緒が良い。』

ロマは僕の胸に顔を埋め、僕のこの心の中に帰りたいと願ったのです。
最期を僕の中で迎えたいと。


「…分かりました。有り難う、ロマ。貴方はなんて優しいのでしょう。」

僕は彼を抱き締め、想いを言の葉に乗せました。


「…ロマ、有り難う。僕の心に戻って、ずっと僕と共に…」

僕の中に彼は居る。
寂しくはありません。
むしろ心強いと思えたのです。


ワン。
『生んでくれて、有り難う。』


そんな感謝の言葉を僕へ残し、彼は光輝き僕の胸に溶け込みました。


「…じゃあ…僕も…」


時ハ、満チテイル。


「…風たち、お願いしますね?」

僕は立ち上がると、周囲に目を配ります。

サァ…

目には見えない、柔らかな風が吹いていました。


「…風たち、貴方たちは自由に世界を巡れる。僕にはもう出来ない。…羨ましいですね。僕も貴方たちの様に、この綺麗な世界を見て回りたかった…。」


サァ…

何と答えてくれたのか、僕には分かりませんでした。

風は穏やかで、僕から微笑みが溢れました。

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