ユピテルの神話


僕は再び月を見上げました。
エマを想う心、を…。


「…エマ、本当に御免なさい。そして、心から有り難う…」

僕に残された心が、あの月と一つになりたいと嘆いています。

この願いが叶う日は来ないのでしょうか。
叶わない願いだと分かっていました。


「…もしも、あの月と僕の心が一つになれたとしたら…。言えなかった想いを、彼女に伝えてしまうでしょう。」


寂しくは、ない。


「…その光は『愛してる』と…彼女に降り注ぐ。でも彼女は気付かない。それで、良いのです…」


大丈夫。
僕は、寂しくはない。


だって、


世界ト僕ハ、

コレカラ…
「ヒトツ」二 ナルノダカラ…。



清んだ空気を一杯に取り込み深く呼吸をすると、

僕は、
最期の言葉を残しました。



「…この世界に、僕の心は要らないのです。僕に残る全ての心は、16個目の月となり、人々を照らし続けるでしょう。僕の体は大地に溶け、この世界とずっと共に…!人々に、恵みを与え続けるでしょう…!」


サァ…


「…どうか…。世界に、大地に…、エマに…。これから沢山の幸せと、素晴らしい未来が訪れますように…!!」



僕ガ、

世界ヲ、守ルンダ…




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