ユピテルの神話
サァ…
――…50年。僕にとっては一瞬。貴女は何をしていたでしょう。此処は、幸せな未来ですか…?世界は、貴女に優しいですか――
サァ…
――…エマ、エマ。言の葉を失った僕は、貴女にたくさん言いたい事があるのです。――
老いたエマは僕に吹かれて、くすぐったそうに笑みを漏らしました。
そして、
こう呟いたのです。
「……優しい風。ユラね…?」
僕は吹くのを止めました。
……ドウシテ?
「…あら、風が止んだ。ふふ…、驚いて固まってしまったのかしら。相変わらず、分かりやすいのね…?」
ネェ、
……ドウシテ…?
エマは、二つ重なった僕の心を見上げています。
その光は、
「貴女を愛しています」
と降り注ぐのです。
「…私ね、思い出してしまったの。私の想いが、神と呼ばれる貴方の想いに勝ったのよ…?凄いでしょう…?」
ふふ…と、
エマは笑いました。
「…森の主に聞いたのよ。あまりに私が寂しがるから、教えてくれたの。貴方の15と16の月が重なる時、貴方に会えるかもしれないって…」
サァ…
――…どうして?僕は、貴女に辛い想いをさせたくはなかったのに。―――