ユピテルの神話
どうして、
忘れていたのでしょう。
いいえ、
ラディスの名を継いだあの日から、昔の名を思い出す事は出来なかったのです。
これで…
運命ガ繋ガッタ…。
「…弟も村の皆も、貴方の事を「神様」だって信じて疑わないのよ?笑っちゃうわよね。私はその度に「天使」だって言うのだけれど、決まって怒られるのよ…?」
――…僕はただの青年。本当は、神でも天使でも、悪魔でもない。運命を紡ぐ者だった、ただの青年です…――
「…怖がりで、寂しがりで、泣き虫で。ちょっと臆病で、一番に優しい…。そんな神様なんて、うふふ…聞いた事ないわよねぇ?」
――…ふふ。本当に…――
二つの月が重なった、
一つの光。
光が少しずつ分かれ始めた時、
僕たちはお互いに月を見上げていました。
この幸せな時間は、
永遠には続かないと知っていたのです。
「…ねぇ、ユラ。50年経って、会えたのは一度だけね?私の体は、次の50年後には尽きてしまい、この世界に無いでしょう?」
――…えぇ。体は土に還り、心は……。それが、人の定めですから…――
僕には、それが出来ない。
追放サレテシマッタカラ。