ユピテルの神話
†七色二光ル花畑
†七色に光る花畑
人々が森の木々を…
その生命の光を大切にし始めてから、この世界でいう「十年」という月日が流れていました。
一度光が失われた村の内部にも、あれから木の実を植え、その実から新しい命が生まれて…
村全体にも、まだ微かながら緑色の穏やかな光が降り注いでいます。
穏やかな日々でした。
大きな争い事も無く、皆が穏やかに暮らせていたのは、ロマという村長の人柄あっての事でした。
「…ユラ、ユラ。居るかい?」
家の外からロマの僕を呼ぶ声がしたので顔を出すと、珍しく深刻な顔をした彼が戸口に立っていました。
「…ロマ、どうかしましたか。」
「頼みがある…」
彼の口からその言葉が出てくるのは、久々の事でした。
世界に光を与えたあの日から、ロマが僕の「力」を頼る事はあまり無かったのです。
僕が力を使えば、彼らの願いは容易く叶うでしょう。
しかし、それでは自分達の為にならない事、僕の力が穏やかな日々を壊すかもしれない事。
争いの火種になり得る事を、
彼は無意識に肌で感じ取っていたのでしょう。
ロマに隠れて僕に直に願いに来る村人も多々居ましたが、ロマとの約束で僕もそれを断っていました。