ユピテルの神話


エマは…

まるであの日に帰った様に、
幼い顔をしていました。


「…貴方は優しすぎるの…。ロマちゃんは一緒に連れていったんでしょう?」

――僕の中に…――


「…どうして、私を連れていってくれなかったの!?ずっと貴方と一緒に居ると約束したわ!?」


――…御免なさい…――


「……御免なさい。分かっているの…。世界の為であり、そして全部、私の為なの。そう分かっているの…。でも、それじゃあ嫌よ…」


彼女は、
言ってしまったのです。


「……白い、花…」


――…花?――


「…覚えている?いつかロマちゃんが私に運んでくれた白い花!…そう、あの花が良いわ…」

――…エマ?――



「…私の体が、貴方の体と一つになれる様に。貴方の大地の一部になれる様に、私は貴方の大地で根を張るわ…。」

――…何…?――


何を言っているのか、
最初は分かりませんでした。


「…私が死んでも、私の想いは残る。…私は心も体も此処に宿らせ、花の姿で…永遠に貴方を待つでしょう。50年に一度、貴方に会えたら…嬉しくて嬉しくて、花びらを開くでしょう。綺麗に、綺麗に咲き誇るでしょう。」


それは、
彼女の言の葉でした。


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