ユピテルの神話


女の子が気を取り直して、わざとらしく咳払いし、空を見上げて僕に問いました。


「…風さんは、ユピテルなの?」


ザアァァ…!

吹く風。
これが僕の答え。


「…そうだ!絶対、今の返事はイエスだよね!?」

ザワ…
『…さぁ?わしゃ知らんよ?』

女の子が森の主に確認をしますが、彼は少し意地悪を言いました。
その言葉にふて腐れたのは、黒い犬竜でした。


ワン。
『…じぃちゃん、ケチ。』

「コン!」

『…むー。だって平気だもーん。可哀想だな!俺様の可愛らしい言葉が聞こえないなんてッ!じぃちゃん、損だなッ?』

クスクス。
クスクス…と、
周囲の風たちも笑っています。


――…おじいさん、そろそろ教えてあげたらどうですか?――


ザワ…
『…ふふ、そうじゃな?「可愛らしい」コンに、「可哀想な」「損な」わしが教えてやろうかのぅ?』

ワンッ?
『――へッ?あれッ?』

「…え?なんで?」

女の子も犬竜も、驚いて口を開けていました。

森は、笑っていました。
風も笑っていました。

僕も、笑っていました。


ザワ…
『今まで、コンの言葉が分かるのは、誰じゃった…?』

「…えっとぉ。あたしと、キースと…」

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