ユピテルの神話
「…そっか。キースとお別れした日…。エマがユラと会えた日に…、あたしたちには見えなかっただけで…」
――そう。僕もあの場に居ました…。エマと共に…――
ワン!
『ねぇ、エマは?』
犬竜はきょろきょろと辺りを見回します。
僕と一緒に此処に居ると思って聞いたのでしょう。
――エマは白い花の精霊。あの山からは出られませんから…。あの場所で今は眠りについています。――
あの日から、
今日で丁度一年でした。
エマに会えた嬉しい僕は風になり、50年に一度、一年をかけて世界を廻る。
今日が、
再び眠りにつく日でした。
――貴女たちはエマの友達。信じられる相手です。そんな貴女たちになら、真実を話せると…信じて貰えると思ったのです。そして…聞きたかった。…この世界は、貴女たちは…幸せですか…?――
「――うん!」
僕の質問に、女の子は何の躊躇いもなく答えたのです。
――…本当に…?僕は、間違えていませんか?世界は、これで良かったのですか…?――
「…難しい事は分かんないけど、…あたし、幸せだよ?」