ユピテルの神話
村から出ると、過去に人々が緑を奪ったままの拓けた大地がありました。
そこは、まばらに背の低い草が生えただけの土地。
「何をする気だ…?」
「僕の力を、この大地に少し分けます。ここに花畑を作りましょう。」
ロマは僕の横で自分の焦りを隠しながら、不思議そうに首をひねっていました。
「…花畑?今、それが何になると言うのだ…」
「まぁまぁ。そうですね、七色の花畑にしましょう。ここを訪れて景色を眺めた人々の心が少しでも和む様に…」
「…病にふせった人々は、足を運べないだろう!?」
何も解決しないだろう、と僕に対してロマの口調は激しくなっていました。
人々を守る村の長として、当然ながら重くのし掛かる物があったからでしょう。
僕はそんなロマをなだめながら、瞳を閉じ、手のひらを大地へと向けました。
僕の足元を中心に、
小さな小さな花たちが…
自らの色に輝きながら花を咲かせて広がっていきます。
「…ほら。どうです、ロマ。綺麗でしょう?」
一面の…
「七色に光る花畑」が、
この地に生まれました。
木々から降り注ぐ緑色以外の「光」を見るのは、彼らにとって初めてでした。