ユピテルの神話
「…綺麗だ…。しかし…」
彼の表情は花たちの姿と香りに酔いしれ、一瞬緩んだ様にも見えましたが、険しい顔にすぐに戻りました。
ロマの言葉を遮って、僕が言葉を発します。
想いを込めたその言葉は、
大地に溶け合って…、
やがて「真実」となるのです。
「…花は、僕の力を大地から吸い上げて可憐に育ち…「蜜」を持つ。その蜜は、人々の怪我や病気に役に立つでしょう。」
「…何…、では…」
安堵に緩んだ表情で、ロマは僕の顔を確認しました。
僕はクスリと笑い頷きます。
「人々がこの場所を踏み荒らさない限り、花は永久的に咲く…。あぁ、人の手で害さない様に、小さな虫たちに蜜を集めさせましょうね。」
広げた僕の手のひらから、
音もなく静かに飛び立つ、小さな羽虫たち。
「大切にして下さい…。虫たちは小さい。間違って殺さぬ様に、皆の目にとまる様に、彼らの尻は青く光らせましょうか。」
「……あぁ…、あぁ、ユラ…」
七色の花畑に、
飛び交う青く光る虫たち。
花畑を包む白く霞む霧は、
花たちに潤いを与える。
そして…
「この霧は花たちに落ち、露となります。小さな花たちが作る蜜にも限界があります。」