ユピテルの神話
「……?」
「…よく覚えておいて下さい。花から落ちた露は集まって水場を作る。虫たちは花から集めた蜜を、この水場に落とすでしょう。人々は蜜に直接手を出してはいけません。」
僕の言葉通りに、
花畑には幾つかの水溜まりが出来上がり、青い虫たちが蜜を露へと溶かしてゆきました。
七色に霞む霧の中で…、
この美しい光景に微笑みながら、ロマは僕に頷きました。
「…あぁ、約束しよう。皆にも必ずそう伝えよう。この可憐な命を絶やさぬ様、大切に守っていく…」
その彼の言葉に、僕もこの花畑もまた温かな幸せな気持ちになりました。
「…さぁ、あの甘い蜜の混じった露を、皆に少しずつ飲ませてあげて下さいね。」
「有り難う…。有り難う、ユラ。これで村は救われる…。大事に大事に頂くとしよう。」
花畑の「露」はロマの指示の元で少しずつ皆に配られ、村は大事には至らなかったのです。
僕の力で生み出した「花畑」。
いわば、僕の「子供」。
僕の「分身」…
皆にも末長く大事に愛されて欲しい、そう願っていました。