ユピテルの神話
†月ガ生マレタ日
†月が生まれた日
「…老いには勝てんな…」
そう言ってロマは畑仕事をしながら笑っていました。
初めてロマに会った時は、僕との年齢の差がそれほど無い様に感じました。
僕は変わっていません。
しかし、彼らと僕の「時の流れ」は違ったのです。
目の前のロマの姿が、日に日に老いていくのが分かりました。
僕が初めて訪れた時、
この地に村は一つだけでした。
村は枝分かれを繰り返し、迷いの森に囲まれたこの地に、今は五つ在ります。
当初その全てをロマが長として治めていましたが、今や村々が独自に長を選び出し、ロマの目が届かなくなってしまっていたのです。
人々がロマに異論を唱え、他の村へ出ていく事もありました。
その原因は、僕の「力」の事も含まれるのです。
長によって考え方も違えば、暮らし方も違います。
ロマと僕が暮らすこの村は温厚な者が多く、変わらずに穏やかでしたが、他の村同士の小さな争いは度々に起こり始めていたのでした。
「老いには勝てない」
そう彼が発した言葉に、彼自身の隠した苛立ちを感じていました。
彼の願いは…いつだって、
この地の平穏でした。