ユピテルの神話
†目印無キ場所
†目印無き場所
夜空に2つの月を浮かべた僕は、穏やかな気持ちでこの地に暮らせました。
僕を仲間として認めてくれる人々に感謝を込めて、村の畑が豊作になる様に村の土にも僕の力を分けました。
村の畑は、
大地の恵みに溢れました。
人々が種を植え、水をやり、愛情を込めて手入れをすると…、尻の青い羽虫たちが花から花へと受粉を手伝いました。
村の木々は緑色の光を降らせながら、その様子を見守り慈しみます。
そうして出来た、
その完熟で美味な実たちは、運命を受け入れ、誇らしげに人々の血となり肉となる…
植物も村人も僕も、皆が幸せ。
愛しい穏やかな毎日です。
そうなればなるほど、この地を出ていった人々の事が気になってなりません。
ちゃんと暮らせているのでしょうか…。
森の外には光る木々は無い。
空に輝く2つの月だけで、ちゃんと彼らを照らせているのでしょうか…
病気になったら治す術はあるのでしょうか…。
「森の番人」に断って森を抜け、ちゃんと七色の花畑の露を求めるでしょうか…
そう彼らを心配するのは、僕だけではありませんでした。
度々、ロマが信頼できる村の若人に様子を見に行かせていたのです。