ユピテルの神話
「木の生えない不思議な場所」
それは、かつて僕が初めてこの世界に来た時に、初めて僕が意識を持った時に立っていた場所でした。
ロマにはその事を伝えていましたから、彼も僕の反応を待っていました。
「ユラ、お前さん確か…」
「分かりません…。その村の事は知らないのですが…、僕が忘れているだけなのでしょうか…」
煮え切らない返事をする僕。
新たな発見に興味津々の若人。
その合間で、
「…少し時間をくれ。私とユラで調べてみよう。分かったら必ず報告するよ…」
ロマは若人に約束しました。
僕とロマは森に入り、森の番人である大樹に問い掛けました。
すると、思いがけない答えが返ってきたのです。
『…わしは動けんから見た事は無いがのぅ。青い虫たちがな、そんな噂話をしていたよ…』
七色に光る街が、確かにあの地に訪れるというのです。
勿論、僕が作った物では無い。
身に覚えの無い事です。
『あの場所に在ったり無かったりを繰り返すらしい…。ユラが作った物だと思っていたんじゃが…違うのかい…』
誰もが、そう言います。
僕も絶対の自信が持てません。
何しろ、この地を訪れる前の事は、記憶にありませんでしたから。