ユピテルの神話
†哀シミガ産ンダ卵

†哀しみが産んだ卵


あの出逢いが、
まるで昨日の事の様に思い出されます。


『君の名は…?』

聞こえないはずの声がします。
ロマの声でした。


「…ユピテル・ラディス…」

僕は紺色の空に返事をします。


『どこから来た?』

「…それは…分かりません。ロマ、今も尚…分からないままですよ…」

ふふ…、
そう哀しい笑いが漏れました。


木々の生えない茶色の大地。
あの日、最後にロマと語り合ったこの地で、彼の面影を求める時間が増えていました。


『今までと変わらず、この地を見守ってくれ』

ロマの残した言葉通り、
僕はこの地に居ました。

若人は次々と僕の年齢を追い越し、昔から知っている村人は、次々とロマの後を追って僕から去っていきます。

寂しさと哀しさは、
僕の心に募る一方でした。


「いつまで、この想いは続くのでしょう…。」

そう考えると、堪らなく僕は苦しくなりました。
それでも、
ロマが守ろうとした人々とこの地を、僕が捨てられるわけがありません。

他に何も持っていません。


「人々の為だけに生きる虚しさ」


夜空の月が、
また一つ増えました。


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