ユピテルの神話


樹の精霊に仕える風。

大昔から人々を見守り慈しんできた彼らが、自ら傍観してきた「真実」を精霊たちに伝え…

精霊から…
時に、こうして人々へと渡るのです。

長い時間を越えて…



サワ…
『じゃあ…今日はどの風から聞いた話にするかのぅ…』

女の子は、未だか未だかと催促する様に笑顔で頷いていました。


サワサワ…
『…おや?今日は珍しい風がこの場所に丁度居る様じゃよ、ハルカ…』


どうやら…
精霊が僕に気が付いた様です。


「新しい風さん?」

『…いいや、約50年に一度だけ…世界を一周してゆく珍しい風じゃよ…』

「…ん?じゃあ、珍しいお話が聞けるかな?」


ふふふ…
そうかもしれませんね。


『お願いしてご覧、ハルカ…』

精霊の言葉に頷いた女の子は、宙を見上げて両手を広げ、大きな声を出しました。


「お願い、風さん!ユピテルのお話を聞かせて?」


――…ザァァ…!


森の中に突風。
これが、僕の答えです。


いいでしょう、
お聞かせしましょう。

人々に…
忘れ去られるのは悲しいから。


世界で消えつつある、


本当ノ、
僕ノ物語ヲ…


君タチニ……



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