ユピテルの神話
「…これが、『喧嘩』なんですね。嫌われるのは、やはり哀しい事ですね…」
しばらくの間、
エマは僕を訪れませんでした。
これで彼女は皆の輪に深く入れるでしょう。
そう安心もしましたが、同時に哀しくもなりました。
ぽっかりと心に穴が空いた様でした。
ロマが僕から去ってから、哀しいとはいえ、彼女という明るい存在が救いになっていた事も事実です。
彼女が伝える村の様子を聞く事で、僕も彼らの一員として楽しく暮らせている様な錯覚さえ在ったのでしょう。
本当ニ独リニナッタ…。
空には月が3つ。
森からは生命の光。
周りを見れば光は溢れているのに、僕の心は真っ暗闇でした。
僕ハ、大丈夫…
誰かと言葉を交わしたければ、僕には森の主が居る。
「人」と関わらなくても寂しくはないのだと、心に言い聞かせました。
「人」…?
僕ハ、「何」…?
彼女は他の村人と同じ様に、僕に接してくれていました。
この世界の一人の人間として、接してくれていたのです。
『ユラだって友達じゃない!!何が違うの!?』
友達だと思ってくれていた相手を、自分から手放したのです。