ユピテルの神話
人々の為だけに生きる僕に、
それ以外の生きる目的の無い僕に…、どちらにしても何らかの変化をもたらすのではないかと期待したのです。
愛しい、僕の「卵」。
共に生きてくれる者なのか。
僕の命を奪う、僕を終わらせてくれる者なのか…
卵が孵る日を心待ちに日々を過ごしていました。
パリ…パキパキ…
僕の腕の中で、卵はそう小さな音をたてます。
外へ出ようと、内側で何かが必死にもがく振動が僕へと伝わりました。
孵った卵から顔を出したのは、意外にも可愛らしい黒い毛並みの生き物でした。
ワン…
そう鳴き僕を見つめる生物はパタパタと尾っぽを振りました。
「……犬、でしょうか?」
僕が首を傾げると、その生き物も腕の中で小さく首を傾げました。
僕を見つめる、愛らしい瞳。
とても「怪物」には見えませんでしたので、僕は笑顔で問い掛けました。
「…貴方は僕と共に長い時を生きてくれるのでしょうか?」
ワンワン…
ワン…
そう必死に僕に鳴き掛けます。
生まれたばかりにもかかわらず、まるで僕の言葉が分かっているかの様でした。
「僕の言葉が分かるのですか?」
ワンッ!
僕は嬉しくなりました。