ユピテルの神話
「…貴方の鳴き声は、ひっそり僕だけに…。卵を生んだ心の主だけに、通じる様にしましょう。」
こうして、言葉を交わせる相手が増えたのです。
僕は、彼の種を「犬竜」と名付けました。
一見、犬の様な風貌ですが、背中には蝙蝠の様な翼がありました。
生み出したのは僕なのに、なぜ彼の姿形がこうなったのか分かりません。
「…僕の名前はユピテル・ラディス。皆はユラと呼びます。貴方にも名前を付けなくては…」
僕の言葉に、犬竜は首を横に振りました。
ワンッ…
『ユラ。名前、決まってる。俺の事、「ロマ」でいい。』
「……!?」
僕は驚きました。
なぜ、彼がロマを知っていたのでしょう。
『…なんで驚く。俺、ユラの哀しみの心から生まれた。俺、ユラの心の一部。だから知ってる。色々、色々知ってる。』
「僕の事を沢山知っているのですね…」
『そう。ユラが望んだ。それで俺が生まれた。これからユラと俺は一緒。もうユラ寂しくない。』
彼の話を聞けば聞く程、僕は嬉しくなりました。
犬竜は卵を孵した主の「力」を糧にし、その生命力を貰って生きる。
僕が生きている限り、犬竜も生き続けるというのです。