ユピテルの神話


エマに二つ違いの弟が居る事は知っていました。

エマとは全く逆の性格で、引っ込み思案で人見知りな事から、僕はあまり会った事はありませんでした。
いつも、エマか亡きロマの後ろに隠れて僕を見ている、そんな幼き日の印象しか残っていませんでした。


「…彼は元気でしたか?小さな時の彼しか僕は知りませんから…。どんな少年に育ったのでしょうね…?」

『あぁ、姉思いの優しい子じゃったよ。今日もな…エマの事で来たんじゃ。』

「…エマの…?」


弟に聞いた話では、
エマが病にかかっているというのです。

元々彼女は生まれながらに瞳を患っていました。
それが原因で熱を出す事は多かったのですが、成長し大人に近付くにつれて体も丈夫になり、その頻度も減っていたはずなのです。


『…今までにない高熱が、もう三日以上続いてるそうじゃ…』

「…三日以上も…?露は、露は飲んだのですか!?」

三日以上も高熱が続けば、例え大人でも衰弱して命すら危ないでしょう。

花畑の露は、彼女の瞳には効果はありません。
しかし、その熱に対しては充分な効果があったはずなのです。


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