ユピテルの神話


『…あぁ、ユラ。家で蓄えていた露を飲んでいたそうじゃ。今日からの分を蓄えに許可を求めて此処へ来たのじゃよ。』

「……飲んでも…尚…?」

僕の顔色が曇りました。

一体、何の病気でしょう。
瞳からの高熱?
彼女を襲っているのは、本当にそれだけなのでしょうか?


――死ヌノデショウカ。



「――おじいさん!彼女の病気の事、もっと何か分かりませんか?詳しく知りたいのですが…!」

焦りが募りました。

ロマとの約束もあります。
それよりも何よりも、
エマは、僕を友達と思ってくれていた優しい子です。

近くには居られません。
しかし、いくら遠くても良いから、居て欲しいと思ったのです。


『…わしも知りたいし助けてやりたいんじゃが…。何せ、自由に動ける身じゃないからのぅ…。人から聞いた話しか…』

「…そうですよね、すみません。焦ってしまって…」

どうしたら良いでしょう。
そう黙り込んでいた矢先でした。


ワンッ!
『ユラ、歩ける。ユラが自分で行けばいい。村に行けばいい。』

「…!?」

ロマがきょとんと僕を見上げて、鳴いたのでした。


ワン。
『ユラ、本当は行きたい。行きたければ会いに行けばいい。』


< 52 / 171 >

この作品をシェア

pagetop