ユピテルの神話


ロマは、僕の心の一部。

村に行くのは怖い。
それでも、本当は行きたい。
皆と共に在りたい。

そんな僕の本当の心を、ロマには見抜かれていたのです。


「…しかし、ロマ。急に僕が押し掛けたら、村の人々がどう思うか…」


拒絶サレルノガ怖イ。


「…それに村で唯一交流のあったエマにさえ、僕は嫌われてしまいましたから…。僕が行ったら、きっと…」


嫌ガラレル。
迷惑。嫌ワレル。
コレ以上…


『――ユラ、エマはお前さんを嫌っておらんよ。』

自分の心に言い訳を繰り返していた僕は、森の主の言葉に動きを止め、彼を見上げました。


「…いいえ、嫌われたんですよ。僕が…酷い事を言ったんです…」

彼から返って来たのは、今まで僕が知らなかった意外な真実でした。


『…それは、知っておるよ。その後、エマは泣きながら…わしの元へ訪れたのでなぁ…』

「…泣きながら…貴方を…」


『あぁ、初めは哀しさに涙しておったがな、エマはお前さんの心を理解しておったよ…』

「僕の心を…理解…?嫌われたのではないのですか…?」


『…これはユラには秘密だと言われていたんじゃが……』

そう前置いて語り出す隠されていた真実に、僕は涙が出そうでした。

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