ユピテルの神話
†降リ注グハ生命ノ光
†降り注ぐは生命の光
そこは、この世界の中心だと言う小さな小さな村でした。
森の木々に囲まれた、光の無い暗闇の村です。
そこでは貧しいながらも人々が生き生きと暮らしていました。
「世界の中心」
それは外の土地を知らない村の人々がそう信じているだけに過ぎません。
この世界は、丸い。
どの土地も中心にはなり得ない事を、僕だけが知っていたのです。
木で造られた質素な民家の中で、僕はその家主と思われる男性と向き合っていました。
「君の名は…?」
「…ユピテル・ラディス…」
「どこから来た?」
「…それは…分かりません」
暗がりの中、家主は疑う様に首を傾げたのですが、僕は嘘を言ってはいませんでした。
この村に訪れる少し前…
気が付けば、広大な大地の中心に一人ぽつりと立っていました。
生い茂る森の木々も、その場所には一本も在りません。
まるで…
今までここに在った何かが丸ごと姿を消した跡地の様な、広い四角い茶色の大地の上だったのです。
記憶が無かった。
しかし…
そこに在った何かに、
「置いていかれた」
そう感じました。
とても悲しいと心が言っていました。