ユピテルの神話
そして、
村をあんなにしてしまった僕を、責められて当然な僕を、
決して責めませんでした。
『辛かったね』
『ごめんね』
そう繰り返しました。
エマは僕が話した「本当の事」を、村人たちには話したのでしょうか。
話していないと思うのです。
彼ら村人の僕に対する態度は、『村を救った神』のままだったのです。
エマは森の主の傍らに屈み、籠の花たちをぎこちない手付きでこの場所へ移し変えました。
「会いに来てくれて有り難うね。おかげでこんなに元気になったんだよ?」
花たちにそんな言葉を掛けながら、隣で見守るロマの頭を撫でます。
まるで…
僕まで優しく撫でられている様で、ふっと表情が緩みました。
「ねぇ、ユラ。見て?私ちゃんと植えられたかな?花たち、大丈夫かな?」
高熱から目覚めても、エマの瞳は相変わらず光を映しませんでした。
しかし…。
「…大丈夫だと思いますが…。ご自分で確認してみたらどうですか…?練習を兼ねて…」
「…あ。そっか!やってみる!見ててね、ユラ!」
彼女は別の方法で、
「世界を見る術」
を手にしていました。