ユピテルの神話
エマが静かに…、
何も映す事はない瞳をそっと閉じます。
「………」
風たちが森の木々を揺らす心地良い音だけが耳に響きます。
しばらくすると、
パサッ…
そんな微かな音と共に、
彼女の背中に…
羽根が広がりました。
七色の…
虹色の「羽根」――…
そう…
僕と「お揃い」の…。
彼女の背に在る羽根が、
七色に綺麗に輝いていました。
「……見えた!花たちが見えたよ、ユラ!」
彼女の瞳は閉じられたまま。
嬉しそうに僕の方を振り向きます。
「…そう。根がちゃんと植えられているか、よく確認してあげて下さいね、エマ。」
「羽根」を持ったのは、
なぜなのでしょうか…。
僕が人々やエマと違う事を嘆いたせいでしょうか。
エマは僕と同じ羽根を持ち、その不思議な力を使って…、
短い時間ではありますが、世界を少しだけ見れるようになっていました。
『きっと「心の目」なんだね!』
彼女はそう言っていました。
僕はそんなエマの横で、再び森の主に手を掛けます。
――…村人が一人、高熱に倒れたよ。今度は若い男の子だよ。―――
――村人が代わる代わる高熱を出して眠りに入るよ。―――