ユピテルの神話
水が流れるかの様に、
月日は、静かに流れました。
エマはあどけない少女から大人へと成長し始めていました。
相変わらず僕の成長は止まったままでしたが、見た目はエマと同じ年頃でした。
成長の止まった体を、彼女と並ぶ事で初めて嬉しいと感じたのです。
エマは僕の横に寄り添い、優しく笑い掛けました。
その笑顔は、昔から何一つ変わりません。
「…いつかね、おじいちゃんに聞いたのよ?ユラの背中には綺麗な羽根が生えているって。」
「…ロマに?」
僕の傍らで眠りこけていた犬竜ロマが名前に反応してピクリと顔をあげますが、自分ではないと知ると再び地面に顔を戻しました。
「そう。ユラは気が付いていないから、皆と同じで在りたいと願っているだろうから、あえて言わないんだって。」
「ロマには、僕の気持ちがお見通しだったのですね…」
エマは嬉しそうに「ふふふ」と含み笑います。
「ずっと、その綺麗な羽根を見てみたかったのよ?…ユラは自分を、悪魔かもしれないって言っていたんでしょう?でも私はこう聞いたの。」
「……?」
「おじいちゃん、その羽根は『天使様の羽根』なの?って。」
僕はその言葉に驚き、目を丸くしました。