ユピテルの神話
「…僕が、天使…?」
「そうよ?皆にユラの様子や行いを聞いて、実際にユラと話してみて、そう思ったのよ。」
エマの言葉は、
まるで僕の為に在る様でした。
暗い暗い…、
放っておけば闇ばかり生まれる僕の心を照らす光の様でした。
「…僕は…自分が怪物の姿をしているんじゃないかと思っていたんです。」
「あら。心の目で見た貴方は、私の想像通り優しそうな青年だったわ?私たちと大して変わらなかったわよ?」
エマは見えない瞳で僕を見つめ、きょとんと首を傾げました。
「…えぇ、嬉しかった…。僕は知るのが怖かったのです。人々と距離を置いても尚、エマと過ごせていたのは、貴女の瞳が僕を映さないから。だから、怖くはなかったのでしょうかね?」
そうです。
彼女には、僕の姿形は関係ありませんでした。
僕の内側、心で全てを判断してくれていたのです。
その見えない瞳は、
僕の為に在ったのかもしれないと、自分勝手に思ってしまうのです。
「…ふふ、ユラは怖がりね?」
「怖がり?僕がですか…?」
そんな事を言われたのは初めてでした。
エマは探り探りに僕の頬に片手を添えて、優しく言いました。