ユピテルの神話
「…エマ…」
「ん…何?ユラ。」
「…僕は、貴女の瞳に光を…」
そこまで言い終えた僕の口唇が、エマの人差し指で止められました。
「…それ以上は、言わないで?」
静かに悲しそうに笑うエマの背中には、七色の羽根。
魔法を使い、心の目で僕を見つめていたのです。
人々が長い時間魔法を使い過ぎると、疲れてしまいます。
魔法の力は、主の生命力を少しずつ削るのです。
エマが「心の目」を使うのは、大切な時だけでした。
それが僕の言葉が「真実」になってしまうのを止める為の、この時だったのです。
「…ユラ、私はこの瞳を気に入っているのよ?昔から言っているでしょう?」
「…えぇ…でも…」
「…有り難う。でもね?私も怖いのかもしれないわ。」
「…怖い?」
僕は聞き返しました。
瞳が光を映す事に、何を怖がる必要があるのでしょう。
エマは困った様に笑いました。
「…私の瞳は光を映さない。だからこそ見える、大切な物も在るのよ?瞳が光を知ってしまえば、それを忘れてしまうかもしれない…。私が、私でなくなってしまう気がするの…」
「…エマ…」
瞳が光を知らないが為に、
人々や周囲の空気の変化に敏感なエマ。