ユピテルの神話
†七色ノ街ト記憶ノ欠片
†七色の街と記憶の欠片
何故…、
僕ダケ、成長シナイノ?
ドウシテ、僕ダッタノ?
僕ハ、誰ナノ…
エマを愛せば愛す程に、
忘れていた疑問が心を占めていきました。
僕が暮らすのは、
いつかの、茶色の大地の傍ら。
何十年経とうと、草の一本さえ生えない不思議な大地の傍らでした。
そこは、
亡きロマとの思い出の地。
そして、
僕が何者なのかを知る手掛かりが在る土地。
全く現れる気配の無い、
七色に光るという街。
その噂を誰もが忘れ、僕さえも忘れかけていたのです。
しかし、僕は再び心を占めた疑問によって、その存在を思い出していたのでした。
僕が何者かを知る日。
その日は、
唐突にやって来たのです。
人々が活動する時間になり、僕は普段通りこれから訪れるだろうエマを家の外で待っていました。
家のすぐ傍らに立つ一本の樹の根元で、青く光る虫たちとじゃれ合うロマを微笑ましく眺めていたのです。
――ザワザワッ!
木々が風たちに揺れる音。
その普段との微かな違いに、僕は立ち上がり周囲を見回しました。
風たちが僕に何かを伝えようとしていました。
しかし森の主を介していないと僕には伝わりません。