ユピテルの神話


「…どうしたというのですか…」

ザワザワ…
…ザワザワッ!

騒ぎ出したのは、風たちだけではありません。
風たちの力を借りて、森の木々が僕に伝えます。


ザワ…
『ユラ…来たよ…』
『この日が来たよ…』

「…この日…?」

頭上の木々を見上げていた僕は、ロマの鳴き声で首を下ろしました。


ワンワンッ!
『――ユラ!虫たち、言ってる!街が来るって。光と共に、ここに来るって。』

ロマが見つめる先には、茶色のあの大地。


「――…七色の、街…」


僕ノ、始マリ…

心に緊張が走りました。
とても不安でした。

僕の手を握ってくれるエマが未だここには居なくて、一人手のひらを強く握りました。


「…ロマ、こっちにおいで。」

僕はロマを守ろうとする振りをして、彼を胸に抱き締めます。
そうする事で、少しだけ心強くなれたのです。


茶色の大地に、
白く光る霧が掛かりました。

「…ぁ…」

その光は、
遠く遠くから来る様に、少しずつ光の強度を増します。

やがて、それは…
七色の暖かな、見た事もない幻想的な灯りへと変化してゆきました。


音も無く、
ただ静かに…

闇夜の中で、七色に踊る街。


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