切恋華 - SETSURENKA -
第一章:時雨の物語
『ねぇ、なんで泣いてるの?』
後ろから声がして、振り返ってみると、知らない奴が立っていた。
「泣いてねぇし、つか、あんた誰?」
見るからに優等生なそいつは、俺の隣に座ると、俺にも座るように言った。
俺がそいつの隣に座ると、そいつは、こちらを向き、話しかけてきた。
『ねぇ、なんかあったの?』
そいつは、好奇に満ちた瞳を輝かせ、俺の顔を見つめてくる。
質問に応えろよ。
「ちょっとな、付き合ってた奴と別れたんだよ。それだけ。」
『ふーん。
あ、俺は、相原永久、3年A組、出席番号は…』
「いや、もうそこまででいいから。」
俺が小さく笑いながら言うと、永久は笑った。
『ははっ、初めて笑った顔見たかも。お前笑ってた方がいいよ。』
初めて…笑った顔……?
永久は笑いながら立ち上がり、屋上を出て行こうとした。
俺は、焦った様に立ち上がり、永久に向かって叫んだ。
「俺、古村時雨ッ、また会えるよな?」
すると永久は振り返り、携帯を出した。