現実(リアル)-大切な思い出-
メンバー探しが始まって、思っていたよりも早くバンドが結成された。

そのバンドメンバーで過ごす時間は、本当に楽しかった。

だけど、楽しいことばかりだったわけでもない。


俺は、初めて本気で恋をした。

そして、本気で苦しんだ。

朱月と瞬輝以外だったら、俺は葛藤なんて、そんな似合わないことをせずに済んだだろう。


天音の好きな人が、朱月でなければ‥そんなことを、何度考えたか判らない。


彼女の幸せを願って2人を応援するのか、それとも‥そんなことを考えて悩んではみたけれど、結局、俺はそのどちらも選べなかった。

たとえどちらを選んでも、心から笑顔になることは、できそうになかったから…。


それでも、瞬輝が手を差し伸べてくれたおかげで、少しだけ楽になれた気がする。
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