現実(リアル)-大切な思い出-
だけど、どうしても納得のいかないことがあった。


俺はよく馬鹿だと言われるが、そんな俺でも、彼女の気持ちに気付いたんだ。

朱月が気付いていないとは、どうしても思えなかった。

もし気付いているのなら、自分の行動で彼女を傷付けていることが判らないはずがない。

ならば何故…?

一度抱いてしまったその疑問は、絶えることなく頭に浮かぶ。

そして俺は、漸くあることに気付いた。


朱月の行動は、いつだって彼女を傷付けていた。

だけど、朱月が理由もなく、そんなことをするはずがないのだ。

そして彼女を傷付けている事に、心を痛めていないはずがない。

だって朱月は、俺が認めた、誰よりも“良いヤツ”なのだから…。
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