現実(リアル)-大切な思い出-
毎日同じように繰り返される、変化のない生活。

そんな日々に不満を感じていたわけでもないのに、ある日、その日常は何の前触れもなく崩れ去った。

崩れ去ったと表現するほどのことでもないのだが、俺にとっては、かなりの衝撃だったことを覚えている。


ある日、先生に頼まれて引き受けた委員の集まりで、俺は彗(スイ)と初めて顔を合わせた。

他にも数人の姿があったが、このとき印象に残ったのは彗だけだ。

クラスの女子が騒いでいた通り、“可愛い”と言える容姿をしていた。

周りも彗を見て何か囁き合っており、騒がしかった。

だが俺は、その全てがどうでもよかった。

彗のことは、ただ印象的だっただけ。

それ以上の感想は何もなかった。
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